卒業生からのメッセージ:岩澤 柾人さん

岩澤 柾人 プロフィール

入学年:2019年 卒業年:2022年(数理物質科学研究科 電子・物理工学専攻(博士後期課程))

現在の職業(勤務先・役職等):日産化学株式会社 物質科学研究所 物質解析研究部

(2023/11/1更新)


Q 現在のお仕事を聞かせてください。

化学メーカーで様々な社内材料の分析業務に携わっています。

特に弊社では、機能性材料から農薬・医薬に至る幅広い材料を扱っていることもあり、社内材料と一口に言っても、分析対象や目的により求められる計測技術は様々です。また、とにかく数日中に結果が欲しいというものもあれば、少し時間をかけてでも本格的に現象の起源を調べたい、というものもあり、材料開発側の方々とコミュニケーションをとりながら日々業務にあたっています。

最近では、顧客からの要求特性の高度化だけでなく、種々の特性を裏付けるメカニズムの解明を求められることも増えており、汎用的な分析だけでは答えが出せないというものも多く存在します。こうした課題に対しては、大学や他企業との共同研究を通じて、かなりマニアックな計測や評価の検討をすることも少なくありません。多種多様な課題に対して様々な手法を用いてアプローチしていくことは、研究室時代の感覚と通じる部分もあり、これまで学生時代に培ってきた経験が大いに活きていると感じています。

Q 今改めて、電子・物理工学サブPで良かったと思うことを聞かせてください。

私の所属した研究室に限らず、オンデマンドで装置や評価系を開発・改良して、新たな現象の理解に繋げるといったような、一つの領域に縛られない研究室が多かったように思います。そうした環境の中で試行錯誤しながら一歩ずつ研究をやり抜いた経験は、今も自分の中で大きな自信に繋がっています。また、研究の過程ではわからないことが出てくることはざらにありますが、ふらっと遊びに来た他研の先生や学生から聞いた話によって解決した課題も多くありました。より多角的な視野で物事を考えることを学べたのも、様々な分野の人たちとフランクだけど割と真面目に交流ができる環境があってのことだったと感じています。

Q 博士号を取得して良かった点は何ですか?

博士号を取得してというよりは、取得する過程で得た経験や人との繋がりは、他では得難いものだったと思います。特に、他大学の先生や研究者の方々との深いコミュニケーションは、修士時代に経験することは難しかったように思います。また、そうした繋がりを通して、徐々に世界が広がっていく感覚を味わえたのも、とても良い経験でした。

Q 博士後期課程で苦労されたことを教えてください

自分の研究があまりうまくいっていない時期ほど、同年代の学生の良い業績などを目にするたびにプレッシャーを感じていたことをよく覚えています。良くも悪くも、見渡せば自分より優秀な学生ばかり、という環境で、他者と自分を比較して一喜一憂していた時期は精神的に苦しかったです。そんな時ある人に、「世界には飲み水に困る人もいる中で、ずいぶんと幸せな悩みだな(笑)」と言われ、いかに目先のことに捕らわれていたかを気づかせてもらったことは今でも記憶に残っています。

あとは、成果が出たのが遅めだったこともあり、卒業直前の博士論文の執筆時期のことはあまり記憶がありません。

Q 電子・物理工学サブPの博士後期課程への進学を考えている学生に対してメッセージをお願いします

最近、世間(日本)では博士への風当たりが強く、ネットでも「就職できない」とか「食っていけない」というような悪評ばかりを目にします。しかしながら、昨今の技術革新により個人の技能が平均化されていく中で、真に求められるのは数値化することのできない能力ではないかと思います。一見、博士課程とは専門分野の深い知識を得る過程だと思われがちですが、個人的には、問題解決へ至る思考プロセスや些細な違和感に対する嗅覚、独創的な発想や他者を惹きつける話し方、といったような言語化しにくい感覚を、普通は許されないほど恵まれた環境で時間をかけて磨いていける最後の機会だと思っています。

偉そうなことを言っていますが、当時、高尚な思いもなくふんわりと博士課程に進んだ私は、あまり勤勉な学生ではなかったと思います。在学中も周囲に追いつくのが精いっぱい、卒業後の現在も、上述したようなセンスを今の自分が持ち合わせている、とはとても言い切れません(笑) ですが、圧倒的な感性を持つ達人たちからその果てしない世界の一端を感じられただけでも、自分にとっては大きな価値があったと感じています。

泣いても笑っても、立派な大人になる前最後の“再延長のモラトリアム”、悩んでいるくらいなら、思い切りハードに楽しんでみてはいかがでしょうか。