重川教授ら、時間分解⾛査トンネル顕微鏡の簡易化・安定化に成功〜1000 億分の 1 秒と 10 億分の 1 メートルの精度で電⼦の動きを測定する技術の普及に道を開く〜

現代科学は、物質の性質を顕わにする計測技術の発明と進歩を⼟台に発展してきました。近年は⾼速で時間変化する現象を捉える技術開発が盛んに進められています。背景には、スマートフォンなどで使われる半導体デバイスをさらに⾼性能化するため、より⼩さく、より動作が速いものが求められている状況があります。現在では、デバイスの基本構造の⼤きさは 10 ナノメートル(ナノは 10 憶分の1)の領域に⼊り、動作時間の尺度もピコ秒(ピコは 1 兆分の 1)領域に迫っています。


これらのデバイスの特性を⼗分に理解し評価するためには、ナノスケールのデバイス構造において、ピコ秒の時間領域における電⼦の動き(ダイナミクス)を観察する計測技術が必要です。本研究チームはその有望な⽅法の⼀つとして、原⼦ 1 個 1 個を観察できる⾛査トンネル顕微鏡(STM)に超⾼速レーザー技術を組み合わせた時間分解 STM 装置を開発してきました。応⽤も始まっていますが、⾼度な技術要素に対する深い理解と⾼い専⾨性が必要で、利⽤拡⼤を進める上での課題となっていました。


本研究では、これまでの光学システムの仕組みを⼤幅に簡易化し、時間分解 STM 測定を容易に⾏うことが可能な装置の開発に成功しました。また、画像データ取得に必須な装置の⻑時間安定性も⼤幅に向上させることができました。具体的には、レーザーの動作をすべて電気的に制御することで光学システムを⼤幅に⼩型化し、顕微鏡内部にレーザーを集光するレンズを設置することで、試料へのレーザー照射位置が⻑時間安定な状況を実現しました。この装置を⽤い、ガリウム砒素半導体の表⾯における電⼦の挙動をピコ秒の領域で観察、ナノスケールで画像化することに成功し、装置の性能を実証しました。

本装置の開発により、この強⼒な計測技術を⽤いたダイナミクス画像の取得が従来に⽐べて格段に容易に、かつ安定して⾏えるようになりました。本技術の普及を可能にすることで、半導体デバイス材料、太陽電池材料、光触媒材料等の幅広い開発・研究分野への展開が期待されます。

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