鄭助教ら、分子間の滑りによるカーボンナノチューブ繊維の破断現象の直接観察に成功

 カーボンナノチューブ(CNT)は、非常に高い機械的強度を持ち、耐衝撃材料や航空宇宙分野の建材としての応用が期待されています。CNTの実用的な応用には10GPa以上の破断強度が必要であるとされ、これは髪の毛1本の細さで10kgの重りを支えられる強度に相当します。しかしながら、CNTを繊維として紡糸すると、分子間の滑りにより、強度が1GPa程度にまで大幅に低下してしまうことが課題となっています。

 そこで、CNTの分子同士の滑り現象のメカニズムを、実験と理論の両面から解明しました。その結果、分子間で生じる「スティックスリップ挙動」(静止摩擦と動摩擦の繰り返し現象)を世界で初めて観察することに成功し、これが分子間の滑りに大きく影響を与えることが明らかになりました。さらに、窒素をドープした窒素ドープCNT(NCNT)では、電子線照射によってさらに強固な結合が形成されやすく、CNTを束ねた際の強度が高まることが示されました。

 本研究結果は、CNTを用いた強度材料の開発において、電子線照射や窒素ドープが有効な手段であることを示しており、将来的には、より安全で軽量な乗り物やインフラの構築を支える、新たな耐衝撃素材や軽量高強度の構造材料の開発が進むと期待されます。

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