伊藤良一准教授ら、海水から水素を製造する高耐久性卑金属合金電極を開発
水素製造のために有力な水電解法は、淡水を大量に消費するため、使用できる場所の条件が制限されます。本研究では、淡水を用いず、海水から直接水素製造を可能にするための、貴金属を使用しない高耐久性を持つ電極開発を行いました。
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/technology-materials/20231213141500.html
クリーンな水素製造法として、再生可能エネルギーを用いた水電解法が期待されています。しかし、この方法は大量に淡水を消費するため、豊富な水資源がある場所でしか使用できない懸念があることから、無尽蔵に存在する海水を直接使用できる水電解技術の開発が求められます。
海水を電解するときのアノード(陽極)反応は、酸素発生を起こすだけでなく、塩化物イオン由来の塩素ガスや次亜塩素酸なども同時に発生させます。このため、アノード用電極には塩素系の影響を受けにくい貴金属電極(酸化白金、酸化ルテニウム、酸化イリジウム)が多用されています。淡水を用いない海水電解技術の普及には、高価な貴金属電極の使用は望ましくありませんが、塩化物イオンと高い反応性を持ち、塩素や次亜塩素酸に弱い卑金属は、アノードとして耐久性がないという問題があります。
本研究では、9つの卑金属元素から構成された合金電極を開発し、水電解装置運転中の劣化の原因とされる電源のON/OFFに相当する加速劣化試験を行いました。その結果、太陽光発電を利用した場合、10年間以上アノード電解性能を維持できることが示唆されました。
本アノードの電解には、酸化イリジウムアノードよりも高電圧が必要ですが、淡水を使用しない直接海水電解は、「水電解には淡水が必要」という地理的制約を取り払い、再生可能エネルギーが豊富な場所、例えば海に面している砂漠地帯などでの水素製造促進に貢献すると期待されます。
詳しい記事は、大学基幹ホームページに掲載されています。