寺田准教授ら、100分の1㍉を見分けるヒト胚子観察用MRIを開発

小さな物体の内部を拡大して観察できる磁気共鳴顕微鏡(MR顕微鏡)を改良し、100分の1㍉の空間分解能を達成しました。これまでより数十倍高精細で、ヒト胚子の脳神経や臓器の微細な構造を描き出せます。この技術を用いることで、ヒト発生学への貢献が期待されます。


 小さな物体の内部を拡大して見ることのできる磁気共鳴画像化装置(MRI)を、磁気共鳴顕微鏡(MR顕微鏡)と呼びます。これまで、発生の初期段階にあるヒト胚子の化学固定標本の観察に使用され、ヒト発生学の発展に大きく貢献してきました。発生段階ごとにヒト胚子標本をMR顕微鏡で3次元的に観察することで、器官や臓器の発生や成長過程が詳細に可視化され、3次元形態モデルが作成されています。しかし、これまでのMR顕微鏡は空間分解能が最大で100分の4㍉程度であり、ヒト胚子内の小さな構造がぼやけたり失われたりすることがありました。

 本研究チームは今回、100分の1㍉と従来の空間分解能を大幅に上回る高精細なMR顕微鏡を開発しました。これにより、ヒト胚子の脳神経の微細構造を描き出したり、臓器の構造を滑らかに描き出したりすることが可能となりました。ハードウェアと撮像方法を改良し、データを効率的に収集・再構築する技術(圧縮センシング技術)を適用した成果です。

 MRIでは、設定した画素の大きさがそのまま分解能(解像度)になるわけではなく、実際にはさまざまな原因によって分解能が低下してしまいます。画像品質評価用の人工構造物を撮影して解像度を検証した結果、分解能と設定した画素の大きさが一致しました。また、同じ発生段階のヒト胚子標本の光学顕微鏡画像と比較し、微細構造がよく描出されていることを確認しました。

 これらの結果は、この高解像度でのイメージングがヒト胚の微細構造を効果的に描写することを示しています。この技術を用いることにより、ヒト発生学研究における脳や臓器の高精細なアトラス(図説)が構築可能となり、ヒト発生学の発展に貢献することが期待されます。

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