教員インタビュー:羽田 真毅 准教授
Q 研究テーマを教えてください。
化学反応を直接的に観測することが可能な装置を開発して、実際に化学反応(特に光反応)中の原子や分子の運動を直接見るような研究を行っています。
Q 研究の内容と、研究の魅力を教えてください。
光反応が生じる時間スケールは1から100兆分の1秒程度と言われており、これを直接的に見るためには、100兆分の1秒で原子・分子を見るような装置開発を行うような研究が必要となります。このような装置開発と化学反応の直接観測は、米国、ヨーロッパ(特にドイツやフランス)では盛んにおこなわれておりますが、日本では私の研究室が世界をリードしております。
Q 学生にメッセージをお願します。
装置を作るという工学的な要素(テクノロジー)と、作った装置で化学反応などの現象の観測・解明を行うという理学的な要素(サイエンス)の両輪を回す経験を通して、研究の面白さを感じてもらえればありがたいと思っております。誰も見たことのない新しい現象の解明を進めていきませんか?
Q サブPのアピールポイントは何ですか?
電子・物理工学サブプログラムは、装置開発や計測評価などの工学的な側面と、現象の解明などの理学的な側面の両方を合わせ持つ研究室が多くあります。このような経験はアカデミックキャリア(大学教員や研究所の研究員の職種)を進めるうえではなくてはならないものですが、もちろん企業に就職してインダストリアルのキャリアを進める際にも強い武器になります。
Q 研究を始めたきっかけは何ですか?
今もそうだと思うのですが、子供のころは未知の世界を冒険しようするようなアニメや漫画、ゲームなどが数多くあり、私もまたそれらを見て少年時代を過ごしてきました。しかし、実際に大学生になったときにそのような未知の世界というのはそれほど眼下に広がっているわけではなく、宇宙や深海など本当に一部の限られた世界だけが未知なものとしてあり続けていました。誰も見たことのないものを見たいと思ったとき、研究の世界はあまりにも輝いて見えたのを覚えております。若い時代に研究にどっぷりとつかって、誰も見たことのないものを一つでも見たら研究をやめてもいいかなと思っておりました。しかし、この面白さを後の世代の人たちに伝えることもまた重要な仕事だろうと考えて、今も新しい現象の観測とそれが観測可能な新しい装置の開発を進めております。
Q その研究の先にある未来や、あなたが抱く夢を教えてください。
1つは教科書に載る仕事をすることだと思います。これは理学的な側面からの要望ですが、化学反応を初めて教えてもらったときに、おそらく反応の前後を覚えてそれで終わりだったのではないでしょうか?その間でどうなっているのかという素朴な疑問を感じることはなかったでしょうか?その素朴な疑問を答えて、未来の教科書にはその間のことが少しでも記載されるようになることが、一つの重要な研究の先にある未来だと信じています。そのためには誰もまだ開発していない新しい装置の開発が必要になります。
また工学的な側面として、この反応の間に別の刺激を与えることで反応の可能性は無限に広がります。別の反応経路を開拓することで新しい物質の発見につながります。私は、装置開発や計測を得意とする研究者ですが、材料合成や理論計算を得意とする研究者の方々との共同研究を通して、新しい物質の開拓を進めて、社会をよりよくすることも一つの重要な研究の先にある未来だと思います。
Q 日常生活で心がけていることを教えてください。
フェアでありたいと思っております。
羽田 真毅 (准教授)
一貫して超高速時間分解計測手法の開発とその応用研究を行ってきた。測定対象としては、無機系材料から有機結晶、ナノカーボンからソフトマテリアルまで多岐にわたる。液晶中の分子の集団運動を世界で初めて可視化することに成功した。現在は、高コヒーレンス・極短パルス電子線源の開発やスピン偏極型電子線源の開発を行い、より複雑で現実に近い系における物質の光誘起反応の観測に注力している。
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