伊藤准教授ら、卑金属のみを用いた固体高分子型水電解用酸素発生電極を開発

 カーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギーと水の電気分解を組み合わせたクリーンな水素製造技術が求められており、その一つに固体高分子型(PEM)水電解があります。しかし、強酸性環境下での電気化学反応のため、大量の貴金属電極を使用せざるを得ないことが欠点です。本研究では、強酸性中でも腐食しない、PEM水電解用卑金属電極の開発に世界で初めて成功しました。

 PEM水電解の電極研究は、これまで、貴金属である白金とイリジウムの使用量を減らすための工夫に注力されていました。しかし、理論上、一定量の貴金属は使用しなくてはならない上、再生可能エネルギーの導入が本格化する2030年以降は、イリジウムの調達合戦が激化し、水電解プラント建設に必要となる十分な量を確保することが困難になると予想されます。そのため、貴金属使用量を減らすのではなく、貴金属を使わないPEM水電解技術への転換が必要になります。

 本研究では、不働態化しやすい卑金属と触媒能力が高い卑金属を合金化することで、通常は硫酸中で容易に溶解してしまう卑金属陽極を、電源オンオフを模擬する実験において、3年間にわたって99%以上の性能を保持させることに成功しました。卑金属電極は、イリジウムよりも1000分の1程度の低コストな材料であり、太陽光発電や風力発電等とPEM水電解を組み合わせたオンサイト水素製造用電極としての利用が期待されます。

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