羽田真毅准教授ら、結晶中の電子の集団的な運動が原子を動かすプラズモン誘起原子変位を初めて発見-見えない光学センサーなど新技術の実現に期待-
赤外線という目に見えない領域の光は、サーモグラフィや生体認証センサーに代表されるように幅広く工業応用されています。京都大学大化学研究所 坂本雅典 准教授、筑波大学数理物質系物理工学域 羽田真毅 准教授、物質・材料研究機構 上杉 文彦 主幹エンジニア、京都大学福井謙一記念研究センター佐藤徹教授、大田航 同博士後期課程学生(研究当時)の研究グループは、赤外線を当てることでナノ結晶と呼ばれる極めて小さな結晶の表面で生じる電子の集団的な運動(局在表面プラズモン共鳴, LSPR)を生じさせ、それが硫化銅(CuS)ナノ結晶の結晶中の原子が同じ方向に協同運動する現象を引き起こすということを発見しました。赤外線照射下での電子線回折測定、時間分解電子回折解析、理論計算を用いて現象の解明を進めた結果、LSPR を誘起することにより協同的ヤーン-テラー効果が引き起こされ、準安定構造への原子変位が起こることを明らかにしました。 さらに、この原子変位により、室温での CuS ナノ結晶の電気伝導の光スイッチングが引き起こされることを実証しました。この研究は、プラズモニクスを用いた結晶構造の操作という新概念を生み出し、透明な可変抵抗赤外線センサーなどの新技術へ応用できる可能性があります。本成果は、現地時間 2023 年 7 月 31 日 10:00 に国際学術誌「Nature communications」にオンライン掲載されます
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