新任教員インタビュー:姚 遠昭 助教


Q 研究テーマを教えてください

観たいものが観える走査電子顕微鏡(SEM)の開発に取り組んでいます。

Q もう少し具体的にはどんな研究でしょうか?

まず、低真空SEMに関する研究を行っています。低真空でのSEM観察は、試料表面の帯電を抑制することができるため、これまで電子顕微鏡観察が難しかった有機物や生体試料なども観察が可能になっています。低真空SEMでは、導電コーティングなどの時間のかかるサンプル前処理が不要です。この使いやすさから、生体サンプルを観察するユーザーが増えています。 ただし、低真空SEMは検出信号に含まれる物理情報が明らかではありません。私は低真空SEMの電子検出の物理を明らかにするとともに、新たな応用をめざして様々な試料観察に取り組んでいきます。

また、データサイエンスに関しても研究を進めたいです。これからのAI時代においては、コンピューターの力を画像処理に活用して、SEMの操作性や測定精度をさらに向上させたいと考えています。5 年前、ChatGPT にスムーズな会話ができるとは想像もできませんでした。今から5年後、SEMに[観察視野内で直径約5μmの円の最も明るい5つの位置を見つけてください] という指示を出したらすぐに答えをもらうかもしれません。そんな未来を目指して頑張っています。

Q どんな学生時代を過ごされましたか?今に繋がっていることはありますか?

留学生として筑波大学で学位を取得しました。大勢の留学生が研究をしている国際的な筑波大学で、日本人だけでなく世界中から来た留学生の友人を得ることができました。日常会話はもちろんですが、講義やセミナー、国際会議での発表や質疑応答、海外研究者とのディスカッションなどで英語力と表現能力を向上させることができ、大きな自信に繋がりました。 学生間の共同研究も積極的に推進し、その後の研究活動に非常に有益でした。この経験を生かし、国際性と広い視野を持った学生の育成のために、各分野の最新の研究成果について学生と英語で交流し、学生レベルでの分野横断共同研究を積極的に支援していきたいです。

Q 日常生活ではどんなことを心がけていますか?

仕事の効率を維持するには、健康な体が不可欠です。特に私のように毎日パソコンにむかっている人は一定の運動量を維持する必要があるため毎週水泳をしています。学生時代から水泳が大好きで、最近は子供たちと水泳をしているため、楽しみが二倍になっています。

Q 最後に学生へのメッセージをお願いします

将来、自身の専門性を外部で発揮する人材になるためには、生涯学び続ける姿勢が重要です。そのためには、学生の興味・自主性を重視し、研究が自分から発信したものだという意識を持つ必要があると思います。特に応用理工学類/サブプログラムは、社会的な要請ではなく、自発的に想起される疑問を研究課題へと昇華させる力が求められます。そのため自らが疑問に思うことを提起し、その解決方策を考え、計画を立案・遂行し、成果を公表するまでの、研究の流れを学生自身が体験することで、能力を発揮できる人材へと成⾧できると考えています。皆さんに自主性を重んじ、卒業後も継続的に学習できる能力を持ってほしいです。応援しています。


姚 遠昭 YAO Yuanzhao(助教)

詳しくは研究者総覧をご覧ください

SEMにおける画像形成過程解析をテーマに、試料から放出された二次電子軌跡計算によって、検出器信号の特徴をあきらかにし、各種電子検出器の特性評価を行う。今後は次世代電子顕微鏡をターゲットに、低真空環境または低加速電圧でのSEM計測技術の開発、および検出信号の物理を解明して新しいSEMの提案を目指す。さらにAI技術を導入してSEM画像処理に取り組み、新しい計測技術の開発に挑む。